債務整理コラム
ドツボにはまるな! 借金問題を解決できない3つのタイプ 3
「決め打ち」で解決しようとする人
「決め打ち」とは、そもそも囲碁や将棋・マージャンなどで用いられる言葉のことです。あらかじめ手を決めておき、それに沿って行動してゆくことを意味します。
サしかし、そういうと誤解する人も出てきます。「決め打ちの何が悪いんだ。目標をきっちりと立てるのはむしろ良いことだ」というのです。
目標を立てることは良いことです。ただ、目標を立てることと、1から10まで完璧に道筋を決めてしまうことはまるで別物。この考えは債務整理においてはとくに大切なものといえます。
では、それがうまくいくでしょうか。シン・イストワール法律事務所からすると、特定調停はあまり良い結果に結びつかないと思います。確かに理屈の上で特定調停は、債務者本人ですべての手続きを行うことができる費用の安い債務整理です。でも、現実的にそれができるかといえば、そこには疑問の余地が残ります。
取引履歴の開示請求などはその最たる例です。特定調停を行うには借入をしたサラ金会社などに取引履歴を開示してもらう必要があります。しかし、サラ金会社にしてみれば、取引履歴を求められるということは、債務者が債務整理を行おうとしていることとほぼ同じ。わざわざ敵に塩を送るようなマネをしたいとは思いません。
このため、債務者がいくら口を酸っぱくして取引履歴の開示を求めても、サラ金会社からは一向に返事が来ない。裁判をすると脅しても「どうぞご自由に」の一言で終わってしまう。もちろん債務者にはお金がないのですから、裁判などできるわけがなく、結局は特定調停が行えない。こういうことが現実では往々にして起こっているのです。
上述では特定調停を例に挙げましたが、これは「決め打ち」の失敗例の中ではまだまだまともな方です。決め打ちが失敗する理由は、専門家に相談をせず、自分の思いつきで「これが一番だ」と決めてかかってしまうからです。そしてそれは往々にしてルールを無視した自分勝手な結論であることがほとんどなのです。
もう一例を挙げると自己破産があります。自己破産をする人は大抵が生まれてはじめての経験です。だからほとんどの人がおっかなびっくり。どんなデメリットがあるのだろう。生活していけるのだろうか。人生に障りは出ないだろうか。石橋を叩いて渡るように慎重に破産をすすめてゆきます。
でも、破産が終わった後、ほとんどの人がおどろきます。「こんなに楽になるなんて! しかも別に悪いことなんてまったくないじゃないか」と、そう思うのです。
しかし、そこで満足して再起を図れば人生がうまくゆくのに、中には自己破産をすることそのものに味を占めてしまう人もいます。再度の自己破産をするには7年の歳月が必要ですが、その間、借金に借金を重ねて、さてもう一度自己破産をしようと企むのです。
シン・イストワール法律事務所は債務整理を専門にしています。だから、最初の自己破産の際「もうなるべく借金しない方がいいですよ」とアドバイスをしています。
でも自己破産直後から「また後で自己破産すればいいのか。だったらまた借金をしても問題はない。7年後が楽しみだ」と決め打ちで人生を歩みだす人も中にはいるかもしれません。シン・イストワール法律事務所ではありませんが、実際、裁判所が二度目の免責を不許可にしたという話はちょくちょく耳にします。
そうなれば後は返済もできず、しかし破産もできない借金の山だけがどこまでもついてまわることになります。決め打ちの恐ろしさはここにあるのです。
誰でも自分に一番都合の良い思いつきに現実を合わせようとします。しかし、それを行えば迷惑する人がたくさん出てくるのです。社会の秩序が成り立たなくなります。だから最大公約数的にみんながギリギリで最も満足できるルールを社会は作っているのです。
決め打ちは自分にだけ都合の良い結論をもってきやすい傾向があります。だからこそ「だいたいこういう風に借金問題を終わらせたいな」と要望をしながらも、専門家からのアドバイスも聞き入れて柔軟に対処する。その現実とのすり合わせが終われば、自分の心にも、社会にも、そして周囲の人々にもみんがまるく収まるような、最も幸せな借金問題の解決策を選び出すことができるはずです。