債務整理コラム
借金問題解決後は「荒野の標識」に注意する 1
今回のテーマは一言でいえば「債務整理後、スムーズに成功へと至るための心構え」といえます。心構えというものは目には見えませんが、実は何よりも大事なものです。
突然ですが、アメリカには荒野があります。みなさまも映画などで見たことがあるでしょう。熱波で空気が揺らぐ中、大きな岩がゴロゴロし、地平線まで続く長い長い一本の道路が続いているような荒野です。
こういう荒野にも道路標識というものがあります。しかし、荒野の標識はなぜかよく倒れていたり、真ん中から折れ曲がっていたりいることが少なくありません。ハーレー愛好者のような巨漢のバイク乗りが蹴り倒したのかと思うかもしれませんが、そうではありません。普通の自動車がよく激突するのです。
四方を遮るもののない広大な荒野の真ん中を突っ切る一本道。そこにぽつんと立つ標識。そんな子どもでも避けられるような標識に、次から次へと自動車が激突するというのはまったくもって不思議な話だといえます。しかし実はこれには理由があるのです。
人は見ているものに引き寄せられます。自転車に乗ってみればその意味はすぐにわかります。自転車に乗って目線を電柱に向ければ、自転車は電柱に向かってゆきます。自転車に乗り始めの頃「電柱がこわい、電柱がこわい」と電柱ばかり見てはそっちにぶつかりにいったことを思い出せばなんとなくわかるでしょう。人は望む望まざるに関わらず、その目が向いているもの、注意を払っているものへと向かってゆく性質があるのです。
同様に何もない荒野の真ん中でぽつんと標識が立っていれば、運転手さんはみんなそこに目を向けます。すると当然ハンドルもそちらに少しずつきられてゆき、やがて自動車ごと電柱へと激突してしまうのです。不思議なことのように思えますが、本当の話です。
さて、借金問題へと話題を移しましょう。多重債務者の多くは借金をすることに慣れています。遊びやちょっとした出費があるたびに「なんとなく」借金をして、返済日の前には「なんとなく」金利と支払いの計算をはじめます。そうしてお金が足りなくなれば今度は別のサラ金から借入をする。この繰り返しです。
しかし、そんな多重債務生活は長く続くものではありません。複利の効果というものは恐ろしく、ほんの数ヶ月もすれば債務は到底返済できない金額まで膨れ上がり、同時に融資を行ってくれるサラ金も誰もいなくなるという、深刻な事態に直面するのです。
多くの多重債務者はこの瞬間「借金」というものの本当の恐怖を慄然たる思いで受け止めることになります。この時点で、大体六割くらいの多重債務者が債務整理について調べはじめます。しかし残り三割程度の債務者はこの時点でもまだ、借金の踏み倒しを図ったり、リボ払い・一本化を考えたりするなど、返済から顔を背け続けます。
後者のような債務者の場合、早めに債務整理を行えば任意整理で十分何とかなったにも関わらず、あまりにも借金がかさんでいるため、自己破産を余儀なくされることが少なくありません。
これは医療でいえば、悪性腫瘍を早期発見した時点ですぐ薬を飲んだり、放射線療法を行ったりすれば簡単に完治できたにも関わらず、たとえば「仕事があるから」とか「タバコやお酒を止めないといけないから」とか「医者にかかるのは好きじゃないから」など、あれこれと理屈を並べ、治療を先延ばしにすることと同じです。