債務整理コラム
意識が切り替わったときには要注意
ナニワ金融道と言う、サラ金をテーマにした有名なまんががありますが、この本の中で小さな会社の社長が、徹夜でお金をかき集めて持ってくるシーンがあります。この社長さんは徹夜明けの制限時間ギリギリに、しわくちゃになったお札をドバっとぶちまけるのですが、夜なべして金策をしていたこの間、社長さんの頭の中はとにかくお金を集めることでいっぱいだったことでしょう。
私たちは日ごろ、自分を取り囲む状況に対して、上手に思考のバランスを取りながら生活を送っています。たとえば一般的なサラリーマンであれば、朝は起床後に洗顔、朝食を採りながらテレビのニュースを見て、頃合いを見計らって定時に出社すると言った具合です。しかしこれが、電車が遅延したり、体調が悪くなったりした場合はどうでしょう。頭の中は別の交通手段を探したり、風邪薬を飲みながら体温を計ったりすることで手一杯になるはずです。
これはどんな人にでも当てはまることです。人は通常、頭の中にあるものを予期しながら日常を送っています。これを視野と言います。いつもカギを置いてある場所に何気なく手を伸ばしたところ、いつもとは異なり、僅か数十センチほどずれた場所にカギが置いてあったため、つかの間と言えども、パニックになってしまう人もいるはずです。これは自分の頭の中にある視野に存在するものが現実には存在しなかったため。
このように異物が日常に介在すると、人はそれに意識が釘付けになります。たとえば恋愛で頭がいっぱいになる女の子もいれば、試験の点数で頭がいっぱいの受験生だっていることでしょう。同様、借金と言う異物が日常を侵食し始めると、人はそれで頭がいっぱいになってしまうのです。
さて、借金で頭がいっぱいになってしまうとどうなるでしょうか。人はまともな日常が送れなくなってしまいます。会社に行っても業務は上の空、頭の中は次の返済日でいっぱい。パソコンでの調べ物と言えば「審査の甘いキャッシング」やら「ブラックでも借りられる消費者金融」やらと言った具合です。これでは近いうちに日常生活は破綻してしまうことは誰の目にも明らかなことでしょう。
このような意識の状態のことを、心理学では「トランス状態」とか「変性意識状態」と呼びます。トランス状態と言うと何だか幽体離脱でもできそうなオカルティックな響きがありますが、実際には朝の電車が遅延したときも、ロック音楽を聞いて興奮したときも、悲しいドラマを見て涙している間も十分なトランス状態と呼べるのです。
借金で頭がいっぱいの状態も一種のトランス状態です。そして上述したようにトランス状態はまともな日常生活から意識が逸脱しています。先に述べたナニワ金融道の社長さんのように夜なべして金策に走り回っているような状況などを想像すればわかりやすいでしょう。金策で走り回っている間、社長さんは借金の整理などを考えるはずがありません。
しかし、これがたとえば「ちょっとうまい話」だったとしたらどうでしょう。50万円を出せばとりあえず100万円を貸してあげると言った類のものです。頭の中が金策でいっぱいで他のことなどまるで考えることができなくなっている、この社長さんならばあるいはこんな怪しげな話でも思わず飛びついてしまうかもしれません。
このようにトランス状態、とくに借金問題に心が呑まれている状態は危険極まりないものです。ではこの状況を解除する方法はあるのでしょうか。トランス状態を解除するにはトランスを起こした問題を取り除くことが先決です。たとえばカギがないのであればカギを見つける。恋愛であれば恋を叶える。音楽であれば聞くのを止めることです。
では借金問題でのトランス状態の解除はどうするか。答えは簡単。借金をなくせば良いのです。もちろん、借金問題を何とかするために危険な意識状態になったにも関わらず、そもそもの借金をなくせとは何事だとお思いの方もいるかもしれません。
でも、ちょっと待ってみてください。いつもの置き場所にカギがなかった人は、その人の脳内に思い描いていたカギが現実世界に反映していなかったためパニック状態になったのです。では、現実は借金を負っているにせよ、債務者の脳内では借金が存在しなかったとしたらどうでしょう。落ち着いているはずですね。
そのような状況を作り出す方法があるかと言えば、答えは簡単です。借金がなくなった状況から逆算して現実世界にまで到達させれば良いのです。債務整理を行うことしかり、知人から借金をすることしかり、幾つものシナリオを思い描いて解決策を作ればリスクは大幅に軽減することでしょう。ましてやそう簡単に詐欺には引っかからなくなります。
みなさまも借金問題でパニックに陥りそうな場合、まずは借金のなくなった自分を思い描き、そこから解決方法を逆算してみてください。その場合、必ず債務整理を含めることも忘れずに。