債務整理コラム
サラ金業界の3すくみ
サラ金業界は現在風前のともし火にあるようです。これはひとえに貸金業法の改正が大きな影響を与えています。しかし本来、現在のような不況のただ中にある場合、不景気産業と言われるものが躍進しますが、サラ金は不景気産業の典型と言えるものなのです。
それにも関わらず、現在ではサラ金業界が大儲けしていると言う話はあまり耳にいたしません。これは法律によってCMに規制が加えられただけではなく、かつてのグレーゾーン金利が撤廃されたことと、過払い金の返還請求により大きな打撃がサラ金業界に加えられたことが挙げられます。かつてサラ金業界の最大手だった「武富士」がその悪どい取立を咎められ、また貸金業法の改正をきっかけに相次ぐ過払い金返還訴訟によって倒産したことは多くの人が知るところです。
では、今後サラ金業界はどのようなかたちになるのでしょうか。端的に申し上げれば現状のままなら、先細りは免れません。これは不景気によって貸し倒れが増えることを懸念して、政府より融資と言うシステムそのものに強い圧力がかかってきているためです。銀行であれ、サラ金であれ、金融と言うシステムそれ自体は良いものでも悪いものでもありません。借り手の信用を担保として、法律に定められた利息を基準に借り手は自分の未来からお金を持ってくる。サラ金の場合、現在では最大でも20.0%が年利ですが、それが返済できるのであれば消費者金融に対する信用は増すでしょうし、返済できないのであれば債務整理を行うと言うただそれだけのものなのです。
余談ではありますが、消費者金融業界は個人の債務者が返済できずに債務整理を行う可能性を、先に貸し倒れリスクとして算出しており、20.0%と言う上限利率と貸し倒れリスクとの双方をうまく天秤にかけながら業務を遂行しています。このため、債務整理を行うことに対して債務者側が「なんだか悪い気がする」と思う必要はありません。何十万・何百万と言う国内の債務者の中で、債務整理を行う人は必ず一定割合存在するためです。
話を戻しますと、サラ金から借入をする層で最も多いのが年収200〜400万円代のサラリーマンです。少なくとも定期的に収入が入ってくるため、サラリーマンは借金の返済がしやすいことが大きな特徴と言えます。視点をひっくり返すと、消費者金融側は借り手の勤める会社を信用にできるため、融資を行いやすいことが増加の一因になったとも言えます。しかし「サラリーマンは気楽な稼業と来たもんだ」と植木等が歌っていた時代はもはや過去のもの。終身雇用制が崩壊することでサラリーマンもいつリストラの憂き目に遭うかわかりません。いかに労働基準法によって守られていると言えど、ある日突然会議室に呼び出され、一ヶ月分の解雇手当とともにいきなり外に放り出される可能性もある時代なのです。よしんば粛々と業務をまっとうしていたとしても会社そのものがやにわに倒産する可能性すら避けられないのです。
不況によってコスト削減が進み、人員カットや給与削減が讃えられる現代にあって、今日明日の生活費や子どもの学費などのための消費者金融に駆け込むサラリーマンはますます増えています。しかし、消費者金融側の視点からすると、終身雇用の崩壊によって債務者の勤め先に対する信用意識が薄れたことで、取立はますます厳しくなる。しかし、それによって当然、債務整理を行う人も増加することになります。サラ金としては貸し倒れリスクが増加することで、利率を引き上げたいところですが、今度は法律が邪魔をする。
このため、本来であれば不景気になればなるほど興隆するサラ金業界は、貸し倒れと上限利率との3すくみ状態によって身動きが取れなくなる可能性が高いのです。
では、今後サラ金業界はどうなることが予測されるでしょうか。考えられる可能性は3つあります。
1)業界の再編
業界と言うよりはシステムそのものの再編と言えます。先に述べた武富士は韓国資本によって再建を図りましたが、いわゆるサラ金と言うシステムだけではいずれにせよ長持ちはしないでしょう。このため、例えば返済方式をリボ払いにスライドさせたり、旅行業界などのような別の業界とうまく提携を図るなど、金融と言う本筋を残しつつも、システムそのものを改変させることが考えられます。
2)上限利率の緩和
これは考えにくいことではありますが、例えば消費者金融およびその親会社に相当する銀行業界が声高にロビー活動を行うことで、あるいは上限利率に変更が加わるかもしれません。ただし、それは貸金業法の改正を反故にするものでもあるため、この可能性は著しく低いと言えるでしょう。
3)ヤミ金業界の横行
これが最もあり得るものであり、現に着実に増加の一途を辿っています。ヤミ金は既存の消費者金融の形態を残しつつも法律を一切顧みないため、元従業員なども手を染めやすいものだと言えます。また(2)に絡んで金融庁は貸金業法の改正とヤミ金増加の因果を一切認めようとはしていません。むしろヤミ金業界は減っていると声高に喧伝している始末です。このため、今後数年間はヤミ金業界が横行する流れになる可能性が高いと言えます。ただし、ヤミ金業者は十年・二十年先を見越してヤミ金を営んでいるわけではありません。おそらくは数年後、ヤミ金問題がほぼ毎日のようにニュースで報道されるようになった頃、警察庁側が本腰を上げて一斉摘発に乗り出し、それによって沈静化を図ると言う流れになると思われます。
上述のように3つほどサラ金業界の今後を挙げてみましたが、実はどのパターンを辿っても景気を上向かせることにはつながりません。今後、世界規模での不景気が予測される中、おそらく日本はまるで鉱物が溶け込んだ沼地のように生き物の気配もなく、ひっそりと佇むだけの未来を築きかねないのです。この厳しい将来を念頭に置くのであれば、今借金問題で苦しんでいるのであれば、まずは大至急これを解決し、景気の上向きと言う春の日差しが訪れるまで、生き残りの手段を見つけることが必要なのかもしれないのです。