債務整理コラム
最も危険な身内の借金
身内の人間が借金をした場合、その対策には四苦八苦する方が多いようです。とくにそれが同居している状態だと、借金問題を解決するのにはかなりの困難を伴います。例えば2010年、愛知県で起きた一家5人殺傷事件などはその一例と言えるでしょう。この事件は15年間引きこもりをしていた子どもが親のクレジットカードを勝手に使い、インターネットでショッピングを繰り返して300万円超の借金をしていたことがそもそもの発端です。親は幾度も子どもの勝手な借金を止めようとは試みたものの、すべて失敗に終わっていたとのこと。そうして最終的に親は借金の遠因であるインターネットの接続そのものを止めたところ、子どもが強行に及んだとのことでした。
このような痛ましい事例に至らずとも、家族の誰かがギャンブルや水商売の女性に入れ込んで、家族のお金を勝手に引き出したり、借金を始めて取り立てが家族に及んだりと言うケースは珍しくありません。また、この状況で家族が債務者に愛想を尽かして窃盗罪で警察に逮捕を願っても、それは実のところとても難しいものだと言えるでしょう。
そもそも日本の法律では警察組織は刑事事件に対してしか動きません。家族間の問題は民事不介入であり、かつ日本では「家族の問題は家族内で解決する」と言う大前提があります。例えば夫婦間で盗みを行ったり、子どもが親のお金を盗んだりした場合でも、これは罪ではありますが、罰は免れます。家族間の窃盗は「親族窃盗」と呼ばれ、刑法第244条第1項によって罪を免責されてしまうのです。つまり、家族の一人が借金を始めると家族全員が迷惑を被ってしまいます。とくにセキュリティが無いに等しい同居等では、家族のお金は債務者にとって使い放題の預金と言うことになってしまいます。
また恐ろしいのは借金を繰り返して多重債務に陥った挙句、債務者が家族の名義を用いてヤミ金等からお金を借りてくると言うような状況です。勝手に名義を用いられた側が、ヤミ金に対して「私はお金を借りた覚えはない」と声高に主張しても後の祭り。ヤミ金は聞く耳を持ってはくれません。ましてや倫理意識の薄い者が身内にいるのですから、債務者である家族は助けてくれるどころか、すぐに逃げ出してしまう可能性も考えられます。他の家族にしても明日は我が身とばかりに震え上がってしまう状況にもなりかねないのです。
このように倫理意識の低い者を身内に作ってしまったり、またそのようなものと同居をしたりと言うことは、自分の生活を大きな危険に晒します。しかも、このように倫理意識の薄い人に対して借金をなくすようにアドバイスすると言うことはとても大変なことなのです。当たり前ですが、借金の目的が遊興費等の場合、それは自分の楽しみを何よりも優先していると言う意識のあらわれです。これに対して周りが何を言っても聞く耳を持つはずがありません。それどころか「うるさい」とばかりに家庭内暴力に発展するケースも考えられます。そうなると、同居をしている場合などは自分の財産や収入を奪いつくされ、何もかもを失って、そこで初めて債務者が、我に返る「かもしれない」と言う淡い望みがかろうじて残るばかりなのです。
逆に家族間であっても事業の失敗や病気などで否応なしに借金をせざるを得ないのであれば、これはもうまったく問題はありません。家族ともに力を合わせてもう一度がんばろうと努力をするのであれば、一人が借金を負うよりもずっと早く問題は解決するはずです。
繰り返しますが家族間の借金について、例え何が起ころうと警察は何もしてくれない確率が高いです。また、債務整理についても、借金の解決は可能でも、その根源である債務者の借金癖そのものをなくさない限り、問題は収まりません。だからこそ、家族間で借金問題が勃発したのならば、まずはその原因を調べることが何よりも大切。そして、債務者が身勝手な理由で借金を始めたのであるならば、このような相手には出ていってもらうか、または自分が引っ越すと言うように、物理的にも精神的にもきっちりと距離を置くことを心がけましょう。