債務整理コラム

速やかに人生再建を図れる人、図れない人

「私の常識、あなたの非常識」と言う言葉があります。グローバル化に向けて人の価値観はより多様化し、いわゆる「社会常識」と言うもののラインが曖昧になってきています。 当所ではありませんが、以前ある司法書士が自己破産の手続きを辞退し、依頼者から強いクレームを受けたことがありました。それは「債務整理中には借金をしないでください」との約束を破り、依頼者が闇金からお金を借りたことが原因です。債務整理を専門とする弁護士や司法書士にとって、自己破産の手続き中に借金をしてはいけないと言うことは、朝から何も食べなければ晩にはお腹が減ると言うくらいの常識です。しかし、債務整理をしたことのない人、ましてや生活費の捻出に苦労している債務者にとってそれはどうでしょうか。よほど口を酸っぱくして強く言わない限り、なかなかその意味が飲み込めないのではないでしょうか。結果的に依頼者としては「生活できないからちょっとお金を借りただけじゃないか。それなのに途中で業務を放棄するなんてどういうことだ」と言う意識が働いたため、クレームの電話をかけてきたのでしょう。

逆のケースもあります。企業向けにコピー機やFAXなどを貸し出しているリース業者と和解交渉をしたときのことです。 リース業者は「もう料金を支払って貰えないことはわかっているんだから、せめて貸し出した機器だけは返して欲しいと電話しているのに、向こうは会社名を出した途端に『あー、はいはい』しか言わずに電話をガチャ切りしてくるんですよ」と言って嘆いていました。この場合などは債務者にとって「借金取りからの電話だ」と言う意識が先に働いて、相手の和解案を聞かずに電話を切ってしまったと言うことなのでしょう。

どんな人であってもその目にはフィルタがかかっています。友人たちと連れ立って雄大な自然を眺めてみたところで、ある人は空の青さに感動し、ある人は森をじっと見つめ、またある人は木々の色合いに目を奪われることでしょう。もちろん共通の感動はあるにしても、誰しもが異なるところを見つめているのです。

外資系大手のコンサルタントが以前このように話をしていました。 「人間は本人も気づかないうちに、どうしても自分の得意分野、自分の世界に相手を引っ張り込む傾向がある。自分は何も知らないのだと言う意識で相手の話を聞くことが何よりも大切なのだ」

当所を訪れられるお客様には少なくとも「債務整理をしたい」と言う意識が働いています。その目的は人生の再建です。しかし、それでもやっぱり「債務整理とは破産であり、怖い。社会的体裁も良くないし、破産した後、本当に人生が再建できるのかわからない」と言う思いを抱えている方も数多く見受けられます。ましてやその思い込みの強い人は「債務整理」と言う単語を聞いた途端に「破産? とんでもない!」と反射的に拒絶してしまい、借金を増やした挙句に悲劇的な結末にたどり着いてしまうと言うパターンになってしまいます。

債務整理はある意味でがん手術のようなものです。ですので、がんである借金を切除すればすぐに生活は改善してゆきます。債務整理後に再び借金をするような事がない限り、ほぼすべての方が当たり前の日常生活に戻っていますし、中には一念発起して大きな成功を収めた方もいらっしゃいます。だからこそ「債務整理は怖いからバツ」などと言って放置したりせず、まずは虚心坦懐に相手の話を聞いてみて欲しいと思っています。「自分は何も知らないのだ」と言う意識に立つことで速やかに人生の再起を図ることができるでしょう。

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