債務整理コラム
「無料」で「課金」
携帯電話でのトラブルが相次いでいます。少し前であれば携帯電話を利用してインターネットのサイトから無料の音楽や動画などをダウンロードしたところ、パケット通話料が数十万・数百万と飛び抜けて高額になってしまったなどと言う話がありました。現在では子供が携帯電話のモバイルゲームを利用したところ、大変な利用料金になってしまったと言う話が多いようです。
いずれにせよ、これらに共通するものは「無料」であると言うこと。世の中には「無料」の物が溢れています。これは空気や水のことではありません。携帯ゲームのCMのようにわざわざ「無料」と銘打っていたり、もしくは相応の価値があるものを黙って差し出してきたりすることです。「クレジットカードを作りませんか。今ならば無料です」と勧誘されたことはないでしょうか。駅前で絵画の招待チケットを手渡されたり、「手相の勉強中です。無料で鑑定いたします」と言われた事はあるのでは? 健康食品の無料サンプルのチラシを見たり、デパートでの試食をしたことは? 必ず誰にでもあるはずです。
債務整理を行っていると「無料」のものから始まって借金を負った人が訪れることがままあります。先の例で述べれば、絵画鑑賞の無料チケットを配り、展示会に来た人に高額なリトグラフを売りつけたり、手相であればある程度の運命鑑定をしたところで「自分の知識ではここまで。詳細は自分の師のところへお連れします」と言う有料鑑定の流れになったと言う具合です。
ただし高額なものを買わせたり、霊感商法じみた運命鑑定は法に触れますが、そこに至るまでの勧誘そのものは単なる手法の問題。それでもあまり褒められたものではない事はよくお分かりのはず。携帯ゲーム会社なども東証一部上場しているから安心などと身構えている人もいるかもしれませんが、実質はとても悪質です。法と実態の乖離を逆手に取って、親名義で携帯電話を貸与されているような子供をターゲットに、ゲーム内での射幸心を煽りに煽って高額な課金データを購入するような流れに持っていくなどと言うものは到底賞賛されるものではありません。
さて、無料の危険性についてざっと例を挙げてみましたが、これらを別の視点から見つめてみましょう。「無料の物を購入させる」手法ではお金のほとんどが一つのところに流れる事がよくわかります。それはクレジットカード。もちろん中には銀行引き落としもあるのですが、大抵はクレジットカードを利用します。例えば高額であっても分割の金額を提示されたり、ゲーム内の仮想通貨と現実とを混同したような数字の羅列だけを見せられた挙句、カード払いの流れになると、現金を目の当たりにしたときよりも「お金が惜しい」と言った気持ちが格段に下がるのです。通信販売にはまって多重債務を負う人などもほぼ同じ心理と言えるでしょう。
私は前回のコラムで「ネオンのようにギラギラと目立つものには近寄るべきではない」と言った趣旨の事を述べました。そして、これらの「無料」で差し出されるものは目にも鮮やか。とても目立ちませんでしょうか。
これらの「無料」につられて借金に陥ってしまった方が個人で解決を試みてもそれはなかなか難しいと言えるでしょう。なぜなら「無料」を謳って高額な売買へと引きこむ人々は購入者一人ひとりに対するサービスなどが無いに等しいためです。彼らは統計や確率で購入回数や購入率をみています。そのため、無料で提供した商品は幾つ。そのうち打診があったものは幾つ。そのうち購入された確率は……と計算しているため、個人個人の事情など一々相手にはしてくれないのが実情なのです。
私は「無料」であることそのものはけして悪いとは思いません。例えば有機栽培でおいしい野菜を作ったのでまずは配ってみて、気に入ったなら買ってもらうと言う行為のどこにも非はないのです。債務整理業者も現在ではそのほとんどがご相談は無料のはず。お話をしてみてお互いに信頼できる相手かどうかを見極めるために有効であるためです。複数の債務整理業者に連絡をして最も自分に合った事務所を利用するのにも便利だと思います。 このように「無料」には是々非々での論点があります。しかし「無料」のワナにひっかかり五十万も百万もするような物品を購入させられたりした挙句、泣き寝入りさせられてしまうと言うのは詐欺にも等しい行為と言えます。必要であれば消費者センターに一報を。それでもらちがあかないのであれば、債務整理についての打診をしましょう。必要もない商品を購入した挙句、何年間も借金の返済をして人生を棒に振るよりはさっさと業者と交渉して債務を圧縮した方がずっと賢明な選択肢だと思います。