債務整理コラム

プラスチックワードと言う闇金

「プラスチックワード」と言う言葉をご存知でしょうか。プラスチックワードとはドイツ人の作家であり言語学者であるペルクゼンが提唱した言葉で、それそのものでは意味を成さない用語のことです。正確に言えば解釈が曖昧なため、文脈の中でレゴブロックのように組み合わせることで自由に定義できてしまう空虚な言葉を示します。例えばそれは「コミュニケーション」や「エネルギー」、「アイデンティティ」や「インフォメーション」と言うものが挙げられます。これらの他にも場合によっては例えば「構造」や「近代化」、最近では「システム」や「最適化」なども含まれることでしょう。

これら「プラスチックワード」の持つ特徴は当たり前のように、しれっと日常に溶け込んでいると言うことが挙げられます。加えてさしたる意味はないにも関わらず、まるで最新の言語であるかのような価値を感じさせるものでもあるのです。

さてなぜ今回、このような話題を採り上げたのかと言いますと、最近「クレジットカードのショッピング枠の現金化」と言う新手の融資が現れているためです。

ご存知ない方のために簡単に説明いたしますと「カードの現金化」とはクレジットカードのショッピング枠を利用して、例えばデジタルカメラやノートパソコンなどを購入し、それを指定の業者に郵送すると定価の9割で買い取るなどと言うものです。字面だけを読めば1割引で品物を売り払うと言うことですが、これをしっかりと考えるとクレジットカードの金利に併せて購入代金の1割を業者に支払うと言うことになります。ただし、それはあくまでも字面の問題。実際には手数料だの郵送料だのと後付され、結局は半額以下にまで買い叩かれたりしてしまうと言うことで大きな問題になりつつあります。なぜなら、例えば私が業者に言われるままに欲しくもないパソコンを、クレジットカードを用いて買ってしまった後、業者に連絡をしたところ、にわかに手のひらを返されて2割・3割の値段ならば買い取ると言われてしまったら、もはや手のうちようもないためです。そして実際にそのような問題が跡を絶ちません。

ともあれ、これらは紛うことなき闇金です。正確に言えば闇金の一種と言えるでしょうか。同じように「携帯電話の貸与」だの「キャッシュカードの作成」だのと言った詐欺も横行しています。そして私が危惧していることは、お金に困っている人の中には、それらの本質の「詐欺」や「闇金」を読み取ることができず、「へえ、そんなものもあるんだ」と飛びついてしまう人がいることなのです。これらの詐欺や融資の話はその形態においては「プラスチックワード」と同じ。もちろん言語学としてはまったく意味合いは異なりますが、自由に入れ替えられる小手先の手法と言う上では、犯罪のプラスチックワードと言えましょう。

しかしながら、では「クレジットカードのショッピング枠の現金化」と闇金業者について気をつけてくださいと私は申し上げません。現実的にはこの「カードの現金化」と言う手法は、月に2〜3回程度は既にニュース番組で警戒を呼びかけるほどに世に蔓延しているためです。とくに現在は貸金業法改正によって専業主婦をはじめとする無収入の方が借金をすることはできません。そのため、主婦層などがうかつに手を出して騙されてしまい、社会問題として取り沙汰されるほどに増えてきているのが実情なのです。ですので、仮にこの現金化の手法が徹底的に取り締まられたとしても、同様にプラスチックワードとして、今後聞いたこともないような新手の闇金が次から次へと現れてくることでしょう。

ですので、私が注意を喚起しているのは「カードの現金化」と言う字面ではなく、あくまでも本質を見ぬいて欲しいと言うことです。ことに警察や社会が監視を始めますと闇金業者に強いバイアスがかかるため、業者もすぐに手法を変えてくることでしょう。この速度は今後どんどん早くなることが予想されます。ですので、心得ておくべきはお金が足りないときに「こんな融資方法があるんだ」と思うことではなく、その向こうに「闇金や詐欺師が潜んでいるんだ」と思えるかどうかなのです。わずか数万円に目が眩んで人生を棒に振ってしまうことはあまりにももったいないもの。闇金が扱う「プラスチックワード」にはしっかりと留意しておきましょう。

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